2016.6.3

今年9月から医療法人の役員の責任が重くなる!?

法律顧問をしている医療法人の理事長先生と事務局長さんに、「これから、医療法人の役員(理事、監事)の責任がどう変わるのか」というテーマでお話をしてまいりました。

「責任やリスクの話ばかりを聞いていると、理事になってくれる人がいなくなっちゃったら困るなぁ・・・」

理事長先生の冗談とも本気とも何ともいえない感想でした。

「今回の定款の変更は大幅なものになりそうですね。早く準備していかなきゃいけませんね。」

事務長さんは定款変更の段取りを大変気にされていました。

 

さてさて、どういうことかと申しますと、、、

 

平成27年の医療法の改正により、医療法に役員(理事長、理事、監事)の権限や責任に関する規定が盛り込まれました。

具体的には、

 

医療法人の業務を執行する理事は医療法人に対して忠実義務(法令、定款、社員総会決議等を遵守して忠実に職務を執行する義務)、善良なる管理者としての注意義務を負い、

もし理事が任務を怠ったことにより医療法人や第三者に損害が生じた場合は医療法人に対して損害賠償責任を負う、

理事長は年に2回以上、自らの業務の執行状況について理事会に報告しなければならない、

理事は競業や利益が相反する取引を行う場合は社員に説明し、報告をし、理事会の承認を得なければならない、

理事会の議事録を作らなければならない

などなど、

 

ということです。

詳しい説明はここでは省きますが、

理事長や理事、監事の権限、役割が法律に明記されるようになったことは、医療法人のガバナンス、コンプライアンス態勢の構築という点では望ましいことだと思います。一般社団財団法でも、もうだいぶ前からこの程度の規定はありましたし。。

ただ義務の内容や責任がしっかり盛り込まれることで、今後は患者、社員、取引先などの関係者から役員への責任追及がしやすくなったのではないかと思います。

「社員代表訴訟」という、社員が医療法人に代わって理事等の法的責任を追及することができるオプションも導入されることになりましたし(株式会社における株主代表訴訟のような手続きです)。

 

また第三者への損害賠償責任などは新しく理事らが負うことになった法的責任になりますので、この点については明らかに従来より責任が重くなったと考えるべきだと思います(理事らに悪意もしくは重過失があることが要件です)。

 

役員の責任が明らかにされた反面、バランスをとるために、任務懈怠があって役員が医療法人に対して法的責任を負う場合であっても、一定の要件を満たすとその責任の全部または一部を免除することができる新しいスキームも医療法に盛り込まれることになりました。

 

まず、役員の責任を全部免除するためには社員総会(財団の場合は評議員会です。以下同じです)で社員全員の賛成がなされることが必要です。社員全員の賛成ということでハードルは高いですが、悪意の役員も免責される余地があります。

 

次に役員の責任の一部免除をするためには、①社員総会で3分の2以上の社員の賛成があること、②理事会で過半数の賛成があること、③責任限定契約を締結していること、のいずれかの要件を満たすことが必要です。

このうち②と③については、事前に、定款(寄附行為)にこうしたスキームを採用していることを規定する必要があります。

また①②③いずれも、役員に重大な過失がないことも要件とされています。他にも小さな要件が課せられますが、ここでは省略します。ごめんなさい。

 

実際に、このうち、どのスキームを採用して、役員の権限と責任のバランスをとっていくかは医療法人の経営者の皆さまのご判断になります。

厚生労働省は既にモデル定款を公表していますが、責任限定のスキームは国が強制するものではないので、この点は医療法人ごとに異なる扱いとなるでしょう。

 

また役員の選任や解任の方法、要件についても、医療法に基づき、各医療法人において検討することになります。

このあたりも、役員の権限や責任の議論と並行して考えていく必要があります。

 

弁護士法人海星事務所が相談を受けている医療法人の関係者の皆様も、みな、どのようにバランスをとってルール作りをしていくか悩んでおられます。

私たち弁護士としても、ひとつのルールを確立してお勧めしているわけではなく、医療法人様の実情や役員の皆さまの考え方やご意見を拝聴した上で、オリジナルの定款に仕上げていくことを心掛けています。

 

まだまだ関心が高くない領域ですが、改正医療法のうちのガバナンス関係の施行日は、平成28年9月1日と迫っています。

医療法人の関係者の皆さま、9月1日時点で必ずしも新しい定款(寄附行為)の認可が得らえていなければ大変なことになるというわけではないですが、近いうちに定款変更しなければならいことは変わりないので、継続、安定した医療経営体制を整えるべく、しっかり準備をしていきましょう。

 

私たち弁護士法人海星事務所は、このたびの医療法の改正や役員の責任の規定と責任限定スキームの構築について積極的に取り組んでおりますので、この方面に関してご質問、ご相談等がございましたら、遠慮なく、声をかけてください。

 

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