2019.6.27

澤井弁護士が「株主平等原則」の落とし穴について解説した記事がRakuten Infoseekで配信されました。

優待弁護士が解説!株主優待、配当が違法で無効!?「株主平等原則」の落とし穴

(トウシル、2019年6月26日 11時8分 )

 

株主優待が無効になるケースとは。

「株主平等原則」って、ご存じですか?

 

個人投資家の皆さんは、株主優待を楽しみに株式を買われている方も多いと思います。かく言う私も株主優待が大好物で、優待銘柄ばかり買っていて周りから「優待弁護士」と言われています。食事券やカタログギフト、クオカードなどの金券も、どれも生活がよりで豊かになってウレシイですよね!

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 でも株主優待が適法有効であるためには「株主平等原則との関係」をクリアしなければならないことをご存じですか?

 株主平等原則に違反すると、違法として株主優待が無効に場合もあるのです。また、厳密には株主優待ではないですが、株主総会の議決権の行使に絡みクオカードなどの金券を交付すると違法となるケースがあります。

 

 そこで今回は「株主優待と株主平等原則との関係」、応用編として「株主総会議決権の行使に絡み、金券(クオカードなど)が交付された場合の問題点」について、実際にあった裁判例に基づき解説していきます。

 

株主平等原則って何?

 株主平等原則とは、会社法上の原理原則です。株式会社の株主は、株主として資格に基づく法律関係において、その内容及び持ち株数に応じて平等に扱わなければならないとする原則です。

 

「株式会社は株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければならない」と規定されています(会社法109条1項)。

 

 例えば、株主総会の議決権行使では、1株の株主は1個の議決権、10株の株主は10個の議決権を与えなければなりません。これが、持ち株数に応じて平等に取り扱うことの意味です。

 そして、「株主平等原則」は強行法的な規定であり、この原則に違反する会社の行為は無効とされてしまいます。株主平等原則はそれほど重要な会社法上の原理原則というわけなのです。

 

「株主優待」と「株主平等原則」との関係

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1.はじめに

 皆さんは当然、株主優待は適法で有効なものと思っていますよね。ですが、株主平等原則との関係が問題になるのです。ほとんどの会社では、株主優待を各株主の保有株式数に比例した取扱いをしていません。

 

例えば:

  • 200株~499株の株主にはクオカード1,000円分
  • 500株~799株の株主にはクオカード2,000円分と、

ある程度の株式数でランク付けして、株主優待を設定しています。そうすると、100株しか保有していない株主は、何にももらえない結果になり、また200株保有の株主と400株保有の株主では、同じクオカード1,000円となります。さらに200株の株主でクオカード1,000円なのに600株の場合は3倍の3,000円ではなく2,000円となります。

 

 このような株主優待の割り振りは、会社法が要求する保有株式数に比例した取扱いになっていません。この点で、株主優待が株主平等原則に反するのではないかが問題となってきます。

 

2.無効説と有効説

 昔は、株主平等原則において法の定め以外の例外は一切認められない、だから株主優待は無効だという説もありました。でもこれだと筆者も困りますし、投資家の皆さんも困ってしまうので、なんとか株主優待を有効にしたいですよね。

 

 そこで「株主平等原則は、形式的には平等に反しているように見えても、実質的な平等に反するものでなければ許容されるのだ」とする説が出てきます。

 株主間の実質的な平等を損なわない範囲、具体的には、その方法が社会の常識に照らして相当であり、株主優待の内容も一定の合理的な範囲内のものであれば(株主優待の程度が軽微であれば)OKとする考え方です。

 

 この説では、株主優待は、その会社の株式を長期に保有してもらい安定株主を増やすために有効な手段なのだということも強調します。もちろん、「優待弁護士」と言われている私もこの説に賛成します。

以上より、現在はこの有効説がおおむね通説となっています。

 

3.株主優待、株主平等原則絡みの裁判例

 今まで、株主優待の適法性が正面から争われた事件はありませんが、株主平等原則、取締役の責任との関係で参考になる裁判例があります。

 

(1)最高裁:昭和45年11月24日判決

これは、ある会社が一般株主との関係で利益配当なし(いわゆる利回り0%)としておきながら、特定の大株主に対しては、利益配当に相当する一定の金額を贈与する旨の贈与契約を締結したという事件です。

 

 裁判所は、この贈与契約が特定の株主のみを有利に取り扱うものであるとして、株主平等原則に違反するため無効であると判断したのです。

 

 一般株主と特定の大株主において、利益配当について不合理な差別をすることは許されないのです。

 

(2)高松高裁:平成2年4月11日判決

 株主優待として、優待乗車券を交付している会社が特定の株主に対して、交付基準を超過する数の優待乗車券を交付したことが問題になった事件です。

 

 裁判所は、善管注意義務違反があったとして、代表取締役に損害賠償責任を認めました。会社として、特定の株主とそれ以外の株主とで不合理な差別をすることになるため、株主平等原則に違反し違法ということになります。

 

応用編:クオカードの提供により株主総会決議が取消となった事件

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1.はじめに

 クオカードといえば、コンビニや本屋などで使える株主優待定番の金券です。私も「優待弁護士」としてクオカード銘柄をたくさん保有しています。

 実は、厳密には株主優待ではないですが、会社側が株主総会の議決権行使にかかる委任状の勧誘(いわゆるプロキシーファイト)に際し、クオカード500円分を提供したケースについて、「株主の権利行使に関する利益供与」(会社法120条11項)にあたり違法として、株主総会の決議が取り消された事件があります(東京地裁:平成19年12月6日判決)。

 

 この事件は、ある会社の取締役・監査役の選任を行う定時株主総会において会社経営陣と株主側で対立が生じ、議決権行使にかかる委任状の勧誘(いわゆるプロキシーファイト)が行われた背景があります。会社側が各株主に対し、有効に議決権を行使した株主に対しては各議案への賛否を問わず、また、委任状により議決権を行使した者も含めて、クオカードを贈呈したというものです。この事件は「株主の権利行使に関する利益供与」にあたり違法だとして訴えられました。

 

2.どういう条文なのか?

 では「株主の権利行使に関する利益供与」とは何でしょうか?

 

 元々は、総会屋を排除するために設けられた規定です。ひと昔の前の話ですが、会社の中には、総会屋に金品を供与することによって総会屋を利用して、株主総会を運営しているところもありました。

 

 しかし、それでは会社財産を不当に流出させてしまい、健全な株主総会の運営とも言えません。そこで1981年の商法改正において、株主総会の活性化を目的として「利益供与禁止規定」が新設されました。これにより、総会屋を含め何人に対しても、会社が株主の権利の行使に関して利益供与することが禁止されました。

 

3.裁判所の判断は?

東京地裁:平成19年12月6日判決は、議決権行使に対する謝礼としてクオカードを提供することは原則として「株主の権利行使に関する利益供与」に該当し許されないとしました。

 

※ただし、例外的に許される場合があるとして、

 

1)株主の権利の行使に影響を及ぼすおそれのない正当な目的に基づき供与される場合

2)かつ、供与額が社会通念上許容される範囲のもの

3)供与総額も会社の財産的基礎に影響を及ぼさないものであるときは許容される余地がある

と判断しました。

 

その上で事案についてあてはめて

2)供与額は500円なので社会通念上許容される

3)供与総額は約450万円も会社の純資産(150億円)と比較して、財産的基礎に影響を与えるものではないが、1)会社提案に賛成する議決権行使の獲得を目的としたものであり、株主の権利行使に影響を及ぼすおそれのない正当な目的によるものということはできないと判断しました。

 

2)3)の要件は、株主優待と株主平等原則の論点にでてきた要件と、ほぼ同じですね。議決権行使に対する謝礼としてクオカードを提供することは、議決権という株主の権利の行使に関して利益を供与することになるので「株主の権利行使に関する利益供与」をクリアするために、さらに1)の要件も必要になるということです。

 

まとめ

 皆さん、株主優待は当然適法だと思ってらっしゃると思いますが、理論的には以下の2点に注意しながら、株主優待生活を楽しんでください。

 

◎「株主平等原則との関係」をクリアしなければならないこと、これに違反すると無効となってしまうこと

◎株主総会の議決権の行使に絡んでのクオカードなどの金券の供与は「株主の権利行使に関する利益供与」に該当し違法となる場合があること

 

 

(澤井 康生)

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