2016.3.17

医療法人の相続対策のための《認定医療法人制度》を利用しましょう

先日、顧問をしているある医療法人の理事長先生から、「『認定医療法人』制度というものがあると聞きました。相続の事で相談させてください。」というご依頼を受け、さっそく病院に行ってまいりました。

 

「認定医療法人」という制度は、平成25年に医療法の改正により新しくできた制度です。

こうしたご相談は弁護士法人海星事務所にも定期的に寄せられることから、今回は、この「認定医療法人」制度について、少しお話ししたいと思います。

 

「認定医療法人」は、持分のある医療法人が持分のない医療法人へと移行を進めるにあたり、国(厚生労働省)から移行計画の認定を受けた医療法人のことを言います。

「持分のある医療法人」とは、定款に持分についての定めがあり、社員が医療法人に対して保持する持分の払戻しを請求することができる仕組みのある医療法人のことをいいます。全国にある医療法人の約80%は「持分のある医療法人」にあたります。

持分のある医療法人のままでいると、将来、社員の方から持分の払戻しを受けたり、社員の方が亡くなった際に相続人が多額の相続税の納付を税務署から求められたりして、医療法人の経営が行き詰まるリスクがあることから、持分をなくしてしまおうという動きがあります。

 

国(厚生労働省)も、継続して安定した医療経営を実現できるように、持分のある医療法人から持分のない医療法人への組織移行を勧めていましたが、なかなかこの組織移行が進まなかった経緯があります。

「認定医療法人」制度は、こうした持分のない医療法人への移行をスムーズに進めるために、国(厚生労働省)が時限立法で成立させて制度です。

 

「認定医療法人」の手続きを簡単に説明すると、

 

・持分のない医療法人への移行計画を策定し、国(厚生労働省)の認定を受けると、その前後に例えば出資者が亡くなったとしても相続税の納税が猶予され、

・移行計画の認定の日から3年以内に出資者全員が持分を放棄すれば猶予された税額が免除される、

 

というものです。

ただし、移行計画の認定は平成26年10月1日から平成29年9月30日までの間に行わなければなりません。

また移行計画の認定の日か3年以内に出資者全員が持分を放棄することができなければ、猶予された税額は全額支払わなければならないことになります。

さらに、この手続きにより相続人らに課税される税金は免除されますが、持分がなくなったことで医療法人に生じる「みなし贈与税」の負担はなくならないことに注意が必要です。

 

認定医療法人になるためには、医療法人の定款を変更する必要があります。定款の変更には一般的に医療法人の社員総会において3分の2以上の賛成が必要です。

医療法人の中には誰が社員が判然としない場合もありますので、まずは社員を特定しなければなりません。また社員と出資者は必ずしも一致しないので、誰が出資者で、出資の割合がどのようになっているのかも予め調べておく必要があります。

そのうえで、社員・出資者全員で持分をなくしてしまうのか、一定範囲で金銭の授受を行うのか、医療法人の将来像をどのようにイメージしていくのかなどをよく話し合うことが大切です。

 

親子間で理事長職を引き継いで病院・診療所を経営している医師はたくさんいらっしゃいますが、こうした事項について話し合っているケースはまれです。

むしろ、なんとなく経営上の課題だということは知っているが、個人の財産権という側面もあり、出資者にもさまざまな考え方の人がいて、どうにもこうにも動きがとれないというケースが大半です。

こういうケースの場合は、税理士、弁護士、医療コンサルタントなど医療税務、医療法務に通じた第三者の立会いの下で話し合いの場をもって時間をかけて話し合いを続けることで解決の糸口が見えてくることがあります。

 

ただ持分のある医療法人は全て持分のない医療法人へと移行させた方がいいかというと、そうでもない場合もあります。

たとえば、医療法人・医療事業を売却したり、経営者を他人(第三者)へ交替することを考えている場合は、持分のある医療法人のままでおいておく方がよいこともあります。

そうではなくて、たとえば後継者の医師が身内にいるケースでは、持分のない医療法人にした方が経営は安定すると思います。持分に起因して何度も相続税を納めたり、持分の払戻しを突然受けるのは大変だなあと感じる方も同じですね。持分からくる心配から解放されますので。

 

持分のある医療法人から持分のない医療法人への移行に際しては、この認定医療法人を利用するかどうかの問題もありますが、他にも、移行のタイミングをいつにするかということも重要です。持分の評価は医療法人の財産、利益等をもとに時価評価で行いますので、1年で半減したり、倍増したりということも起こるからです。

このあたりは、顧問の税理士や弁護士とよく相談して慎重に進めることで医療法人にとって一番有利な時期を見定めることができるでしょう。

 

認定医療法人制度は、このように、医療法人の相続や事業承継の対策として位置づけられます。税務と法務の両面が問題となりますので、税理士、弁護士とチームを作って検討するのが一番良い方法だと思います。

持分のある医療法人の関係者の方々、認定医療法人の制度は平成29年9月3日までと期間が区切られていて、その間に関係者全員のコンセンサスを取る必要がありますので、もし検討されるなら早めに準備を進めるのが肝要です。

 

弁護士法人海星事務所は、全国でも数少ない、医療法、医療法人を専門とする法律事務所です。認定医療法人制度や、持分のない医療法人への移行、医療法改正への対応などのご質問、ご相談は積極的にお受けしておりますので、ご連絡をお待ちしております。

 

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