2016.4.25

澤井康生弁護士の取材記事がヤフーニュースのトップ画面に掲載されました!

澤井康生弁護士の取材記事がヤフーニュースのトップ画面に掲載されました。警察の捜査活動における身柄確保と逮捕の違いについて澤井康生弁護士のインタビュー記事が「ヤフーニュース」及び「THEPAGEニュース」に掲載されました。元警察官僚で警視庁刑事の経験も有する澤井康生弁護士が身柄確保と逮捕の違いについてわかりやすく解説しています。

以下、引用です。

福岡市で2月に予備校生が刺殺された事件、3月に発覚した埼玉県朝霞市で行方不明になっていた当時中学生の少女が保護された誘拐事件。この二つの事件では、容疑者は発見されても、すぐには「逮捕」されませんでした。発見当時に容疑者が怪我をしており、一旦は「身柄確保」という措置を取ったのです。なぜ警察はこのような対応を取ったのでしょうか? そもそもこの二つはどう違うのでしょうか?

【写真】刑事事件での供述調書の「任意性」とは?

逮捕状を見せて「逮捕」が一般的

 まずは、普段耳にすることが多い「逮捕」から確認してみましょう。逮捕とは、警察などの捜査機関など(※)が 、容疑者の逃亡や罪証隠滅など防ぐ目的で強制的に身柄を拘束する行為をいいます。さらに、これは3つに分類され、「通常逮捕」、「緊急逮捕」、「現行犯逮捕」があります。その中で、裁判所から逮捕状を発布してもらい、容疑者を捕まえる通常逮捕が一般的です。その請求手続きは、容疑者が罪を犯したとの相当な理由があるということを警察が証拠資料として添付して立証し、裁判所に逮捕状を発布してもらうことになります。

逮捕時の手続きとしては、警察官が手続き保障の見地から逮捕状を容疑者に提示し、自身の犯罪事実を知らしめたうえで逮捕することになっています。これが、逮捕状の執行という手続きになり、この状態が法的には逮捕ということになります。すると、容疑者の身柄は当然拘束されることになり、普通は警察署の留置場に一定期間、留め置かれることになるのです。

法律上はない用語「身柄確保」

 逮捕が分かったところで、それでは「身柄確保」とはどういうことなのでしょうか? 元警察官僚で警視庁刑事の経験もある弁護士法人海星事務所の澤井康生弁護士は、「報道では、身柄の“拘束”や“確保”という言い方をすると思いますが、法律上はそのような用語はありません。またそれらは厳密には逮捕状の執行ではないので“逮捕”でもありません」と前置きした上で、「身柄確保には法的な強制力がありませんが、事実上、容疑者を警察の監視下に置いている状態を意味します」と説明します。

逮捕は裁判官の逮捕状があるので強制処分としてできる一方、事実上の身柄確保は逮捕状に基づくものではないので、あくまでも任意の手段なのです。澤井弁護士は「事実上の身柄確保について相手方(容疑者)に『嫌です』と抵抗されたら、それ以降は身柄の拘束をできなくなるのです」と指摘しました。

ちなみに、身柄確保と似たような行為に「任意同行」があります。これも逮捕状はありませんので、あくまで容疑者の任意の協力意思を前提として、一緒に警察に来てもらうことになります。もちろん強制力はないので、相手方に拒否されるとできなくなってしまうのです。

身柄を拘束する目的は?

 このように強制力のない身柄の確保ですが、なぜ今回の事件では行ったのでしょうか? 澤井弁護士は「逮捕で身柄を拘束できる時間に、48時間という制限があるのが一番の大きな理由です」と話します。刑事訴訟法の第203条1項では、「司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、……被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない」とし、同条4項では「第1項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない」と規定しています。つまり、逮捕には48時間という厳格な時間的な制限があるのです。

そしてその時間内に、検察庁に身柄を送検するときに必要な、事件に関する捜査書類一式をそろえないといけません。そこでは当然、容疑者の取り調べを行い、例えば弁解録取書や供述調書をいくつも作ることになり、ものすごく時間がかかるのです。

さらに、法律上では48時間と規定されていますが、警察は実際この時間を取り調べにフルに使えるわけではありません。「被疑者の食事、休憩、睡眠時間、弁護士との接見時間もきちんと確保しないといけないので、それ以外の時間しか取り調べができません。そうすると、仮に1日8~10時間取り調べができたとしても、容疑者を取り調べられる時間は最大で20時間ほどしかないのです。(澤井弁護士)」

容疑者が怪我などをしているときに逮捕をしてしまうと、もとから取り調べ時間が少ないのにも関わらず、さらに容体次第では取り調べができないこともあり得ます。その一方、怪我などで入院していれば、容疑者が逃げ出すということも簡単ではありません。このような場合は、取り調べ時間を確保するため、すぐに逮捕ではなく警察で24時間の監視下に置いて容疑者の回復を待つのです。

自白の任意性を担保することも理由

 澤井弁護士は、すぐに逮捕しない別の理由も指摘します。それは、「自白の任意性の担保」です。例えば、容疑者が入院していたり怪我をしていたりした場合に、警察が無理やり逮捕して取り調べをしたとします。澤井弁護士は「そのような過酷な状態の中で取り調べをやると、仮に容疑者が自白をして調書が作られたとしても、後で裁判になったときに自白の証拠能力が否定されることがあるのです。『実はこんな酷い怪我をしていたんですけど、その状態で無理やり取り調べをされました。その結果、自白を強要されたのです』と言われると、自白の任意性が否定され証拠能力がなくなってしまう可能性も出てくるのです」と説明します。そうなると、刑事裁判で容疑者の自白がひっくり返されてしまうこともあり、この観点からも怪我や入院している状態での取り調べはしないのです。ほかにも実務的な理由もあります。「逮捕してしまうと、怪我があっても無理やり警察署に連れていくことになります。警察署の留置場でもかかりつけの医師に来てもらうことはできますが、大怪我の対応はできないのです。(澤井弁護士)」

逮捕状があるのにもかかわらず、すぐには逮捕しない。そこには、このような背景があったのです。

(※)現行犯であるなど必要な条件を満たす場合には私人による逮捕も可能

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■重野真(しげの・まこと) 地方紙在籍中には支局/社会部に所属し、事件事故や学術文化などの報道に携わる。現在はフリーランスの記者として、雑誌・ウェブサイトで硬派記事を執筆するほか、ネットニュースの編集も手掛けている

《取材協力》澤井 康生(さわい・やすお)弁護士 元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。弁護士でありながらMBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も兼任。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など

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