2025.12.5
【Q&A】005 診療拒否が認められる正当な事由
Q
診療内容に長時間のクレームや暴言、威圧的行動を繰り返す患者に対して近隣の病院を紹介したうえで、当院での今後の診療を拒絶することを通告しましたが、問題ないですか。
A
医師には、医師法第19条第1項に基づき、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」という応召義務が定められています。
したがって、原則として医師は患者様からの診療の求めを拒否できません。しかし、この条文が示す通り、「正当な事由」がある場合には、例外的に診療を拒否することが認められています。
➤今回のケースは「正当な事由」にあたるか?
問題は、ご相談のケースが「正当な事由」に該当するかどうかです。
厚生労働省の通知(令和元年12月25日医政発1225第4号)では、診療拒否の「正当な事由」について、以下のような例が挙げられています。
【患者の迷惑行為(正当な事由に該当する)】
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今回のケースでも、クレームが診療行為とは直接関係のない内容であったり、不当な要求(金銭など) を含んでいたり、あるいは大声や威圧的な言動を伴い、他の患者様やスタッフに不安や恐怖を与えるような「迷惑行為」に該当する場合、それは「正当な事由」と認められる余地があります。
特に、その行為によって医師と患者様との間の信頼関係が著しく損なわれ、もはや適切な治療の継続が困難であると客観的に判断できる状況であれば、診療の拒否は正当化され得ます。
また、単に診療を拒否するだけでなく、「近隣の病院を紹介した」というご対応(転医の勧奨)は、患者様の医療アクセス権にも配慮した適切な措置であり、診療拒否の「正当な事由」を補強する事情になると考えられます。
➤慎重な判断と専門家への相談の重要性
ただし、「正当な事由」の判断は容易ではありません。
もし、クレームの内容が(たとえ長時間であったとしても)診療上のミスや説明不足に対する正当な疑問や懸念を(患者様の表現方法が拙いながらも)含んでいる場合、それを一方的に「迷惑行為」と断じて診療を拒否すると、応召義務違反を問われるリスクが残ります。
また、通告の方法や内容が不適切であった場合、かえってトラブルが拡大し、患者様から損害賠償請求や行政への訴えなどを起こされる可能性も否定できません。
「問題ない」と断言するためには、クレームの具体的な内容、頻度、患者様の言動、それに対する貴院の対応履歴などを、法的な観点から詳細に検討する必要があります。
またこのようなカスタマーハラスメントが再発しないように予防策を講じておくことも大切です。
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このようなデリケートな問題の対応こそ、法律家の支援が不可欠です。
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