Q&A

2025.12.9

【Q&A】007 病院の管理監督者の判断

Q

病院の院長や診療科長は労働基準法上の管理監督者に該当しますか。

 

 

 

 

A

「院長先生や診療科の部長先生は、残業代の支払いが必要なのだろうか?」というご質問をよく受けます。

結論から申し上げますと、「院長」は管理監督者に該当する可能性が高いですが、「診療科長」は管理監督者とは認められない可能性が高いです。

役職名ではなく、あくまで「勤務の実態」で判断されるため、注意が必要です。

 

1.労働基準法上の「管理監督者」とは?

まず、「管理監督者」と認められると、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の規制が適用されなくなります。 つまり、病院側は(深夜割増分を除き)時間外手当や休日手当(いわゆる残業代)を支払う必要がなくなります。

ただし、この「管理監督者」にあたるかどうかの判断は容易ではありません。裁判になると、以下のファクターが重視されます。

 

2.管理監督者と認められるための「3つの実態」

役職名(部長、科長、院長)にかかわらず、以下の実態をすべて満たす必要があります。

①経営者との一体性(職務内容) 病院の経営方針の決定(採用、人事、予算編成など)に深く関与していること。

②労働時間の裁量(勤務態様) 自身の出退勤時間や勤務時間を、自らの裁量で自由に決められること。タイムカードで厳格に管理されているような場合は、裁量がないと判断されます。

③地位にふさわしい待遇(賃金) その責任と権限に見合った、一般の職員と比べて高額な役職手当などが支払われていること。

 

3.「院長」「診療科長」への当てはめ

➤院長の場合

  • 医療法人の理事長を兼務している場合: そもそも「労働者」ではなく「経営者(使用者)」ですので、労働基準法は適用されません。
  • いわゆる「雇われ院長」の場合: 病院全体の経営を任されていることも多く、上記の3要件(特に経営への関与と労働時間の裁量)を満たす場合は管理監督者と認められる可能性が高いです。

 

➤診療科長(部長)の場合

  • 管理監督者と認められにくい(否定される)ケースが多いと思われます。
  • 理由:
  • ■(経営との一体性)診療科のトップであっても、病院「全体」の経営方針決定にまで関与しているケースは少ない。
  • ■(労働時間の裁量)手術や外来のスケジュールが厳格に決まっており、自身の裁量で出退勤を自由に決められる実態がないことが多い。

 

【最大のリスク:「名ばかり管理職」】 診療科長を「管理監督者」として扱い、残業代を支払っていなかった場合、もし裁判などで「管理監督者ではない」と判断されると、病院は過去に遡って(最大3年分(2025年12月時点))莫大な金額の未払い残業代の支払いを命じられることになります。

 

 

~専門家による労務体制の整備が不可欠です~

医師の働き方改革も始まり、医療機関における労働時間の管理は、病院経営の最重要課題となっています。 「管理監督者」の判断を誤ることは、将来的な未払い残業代請求という巨大な経営リスクを抱え込むことになります。

 

私たち弁護士法人海星事務所は、医療分野、介護分野の法務を最大の強みとし、数多くの医療法人様の労務管理体制(就業規則や給与規程の整備)をサポートしてまいりました。

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