2025.12.17
【Q&A】013 債務超過の医療法人の解散・清算
Q
医療法人社団を解散したいのですが、資産よりも債務の方が多い状態です。法律的にどのようにして解散、清算したらよいですか。

A
医療法人社団の資産よりも債務の方が多い(債務超過)状態の場合、結論から申し上げますと、通常の「解散・清算手続」を行うことはできません。 この場合、法律上は「破産手続」(破産法)を選択する必要があります。
1.なぜ「通常の清算」ができないのか
医療法人が解散する場合、通常は理事長などが「清算人」となり、財産を整理して債権者に分配します。しかし、これは「資産が債務より多い(すべて返済できる)」ことが前提です。
債務の方が多い(債務超過)場合、全額を返済できないため、清算人には破産手続開始の申立義務があり(医療法第56条の10第1項)、通常の清算手続を進めることができません。また、株式会社のような「特別清算」という手続も、医療法人には認められていません。
したがって、破産法に基づいて裁判所を通じた「破産手続」によって、公平に資産を処分し、法人を消滅させる必要があります。
2.具体的な手続の流れ
債務超過の状態にある医療法人社団の法的な終了手順は以下の通りです。
1)理事会・社員総会の決議(定款に基づく)
「破産手続開始の申立て」を行う旨の決議を行います。
2)裁判所への破産申立て
弁護士が代理人となり、管轄の地方裁判所に破産を申し立てます。
3)破産手続開始決定(ここで法的に「解散」となります)
裁判所が破産手続開始を決定した時点で、医療法上の「解散事由」に該当します。
この決定と同時に、裁判所から「破産管財人(第三者の弁護士)」が選任されます。
4)破産管財人による業務・財産管理
これまでの理事長等の役員は経営権を失い、すべての財産管理権が破産管財人に移ります。
破産管財人が資産を現金化し、債権者に公平に配当します。
5)手続の終了(法人格の消滅)
配当が終了(または資産がなく配当なしで終了)すると、裁判所の手続が終了し、医療法人は消滅します。
3.法的リスクと専門家の必要性
法律上、清算人(理事長等)は、債務超過状態にあることが明らかになったときは速やかに破産を申し立てる義務があります。これを怠って漫然と運営を続け、法人資産が散逸したり、債権者(取引先や金融機関)の被害を拡大させた場合、理事が損害賠償責任を負う可能性もあります。
解決には高度な専門的判断が必要です
医療法人の破産は、一般企業の倒産とは異なり、都道府県知事への対応、病歴(カルテ)の保管、行政手続などが複雑に絡み合います。
弁護士法人海星事務所は、医療法人、医療経営グループとの関係が密接で、これまで医療法人の解散・清算のご相談や代理業務、また破産管財人業務にも多数の実績がございます。 東京・大阪に拠点を置き、専門家チーム(弁護士・税理士・薬剤師等)が、医療法人の解散・清算及び関連業務のサポートをいたします。ぜひご相談ください。
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