2025.12.18
【Q&A】014 懲戒処分の手続と内容
Q
服務規律違反の従業員に対して懲戒処分を課す方向で検討していますが、どのような手続で、どのような処分を課すのがよいのか、わかりません。どうやって進めるのが法律的に正しいですか。

A
服務規律違反をした従業員への対応を放置したり、また誤ることになると、組織の秩序が乱れ、また他の従業員が不利益を被る恐れもあり、経営者として迅速かつ適切な対応が求められます。
他方、懲戒処分は、一歩間違えると「不当処分」や「パワハラ」として訴訟リスクを招くため、極めて慎重な法的プロセスも必要です。 服務規律違反の従業員への対応として懲戒処分等を検討する場合は以下の点を考慮することが大切です。
➤STEP1 問題行動の特定と処分根拠の確認
まず、問題とされる服務規律違反の具体的な行為が何かを特定したうえで、就業規則に「今回の行為が懲戒事由として明記されているか」を確認してください。問題行動を特定せず、あるいはルールに定めのない理由で処分することはできません。問題行動発生後に策定した就業規則によってそれまで規定のなかった理由により遡及的に懲戒処分を課すことは認められません。
➤STEP2 客観的な事実調査と証拠確保
問題行動を裏付ける「誰が見ても違反は明らか」といえる客観的で合理的な証拠(メール、業務日報、録音、録画、関係者の証言等)を整理して保全しておくことが必要です。いざ懲戒処分が課されるとなると、行為者がいったん認めていた問題行動を否定し始めたり、関係者が証言を翻したりすることもあり、また派閥争いや好き嫌いで虚偽の証言をする場合もあることから、噂や印象だけで処分を行うのはとても危険です。
➤STEP3 「弁明の機会」の付与
処分を決定する前に、必ず本人に言い分を述べるチャンス(面談等)を与えてください。これを行わずに処分を下すと、手続違法として無効になる可能性が高まります。
➤STEP4 処分の量定(相当性の原則)
「遅刻1回で懲戒解雇」が認められないように、違反の程度と処分の重さはバランスが取れていなければなりません。過去の裁判例や他社の事例と比較し、重すぎないか検討する必要があります。
~その処分、本当に裁判で勝てますか?~
具体的な問題行動が服務規律違反に該当するかどうか、また仮に服務規律違反に該当するとしても懲戒処分のいずれかに該当するかどうか、仮に懲戒処分に該当するとしても、どの種類の懲戒処分が相当かどうかは、証拠の評価や法的な評価を含み、とても困難な判断になります。懲戒処分、特に「解雇」を含む重い処分は、後日従業員から地位確認請求訴訟を起こされるリスクがつきまといます。また解雇に至るプロセス(手続)に問題があれば、その違法性が紛争になる場合もあります。深刻な服務規律違反の場合の対処についてはSTEP1からSTEP4の各ステージにおいて弁護士、社会保険労務士などの専門家の関与が望まれます。
弁護士法人海星事務所は、医療・介護・企業法務に携わり、懲戒処分が絡むような労務関係の相談も日常的に受付しております。社会保険労務士との協働により早期に介入する事案も多く経験しております。
対象となる問題行動の具体的内容や職場環境への影響、事業所の事実調査能力の程度等に応じて、出張事実調査、処分の量定についての意見書の提出等の助言や支援を積極的に行っております。また、従業員の服務規律違反に関連する紛争が生じることを防ぐ予防法務(内部規律体制の整備充実、各種研修等)についても助言支援を実施しております。
懲戒処分など労務に関するご相談はぜひご一報下さい。
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