2026.3.3
【Q&A】026 患者からの不当な要求への対応
Q
診療所で、患者が医師に対して、医学的に不要な検査を強要し、また不必要の多くの薬剤を出す内容の処方箋の作成を強要した場合、診療所としてはどのように対応したらよいですか。

A
診療現場において、医学的に不要な検査や過剰な投薬を強要されることは、医師としての倫理観だけでなく、法的・行政的なリスクにも直結する極めて困難な問題です。
☝診療所としての適切な対応について説明します。
まず結論から申し上げますと、医師には「医学的妥当性のない要求」に応じる義務はありません。 具体的な対応のポイントは以下の通りです。
1.医学的根拠に基づき、毅然と説明する
医師法(第20条:無診察治療等の禁止 医師が自ら診察しないで処方箋を交付することを禁止しています。診察の結果、医師が不要と判断したにもかかわらず患者の要求通りに処方箋を交付することは、この規定に抵触するおそれがあります。)や健康保険法に基づき、必要のない診療や処方は行えないことを明確に伝えます。「不適切な処方は患者様の健康を害する恐れがあり、医師の責任を問われるため応じられない」と、医学的判断を優先する姿勢を崩さないことが重要です。
2.「応召義務」の限界を正しく理解する
医師法19条の「応召義務」は患者の要求にはすべて応じなければならないということではありません。厚生労働省の指針でも、執拗な強要や過度な不当要求がある場合、信頼関係が破綻しているとみなされ、「正当な理由」として診療を拒絶することが可能であると明示されています。
3.組織的対応と記録の徹底
医師一人で抱え込まず、事務長や他のスタッフを含めた複数名で対応してください。また、後の法的紛争に備え、発言内容や状況を詳細に記録(録音も有効です)しておくことが不可欠です。
仮に患者様からの執拗な要求に負け、医学的に不要な検査や過剰な投薬を行ってしまった場合は、医師個人だけでなく診療所の経営基盤を揺るがす深刻な法的リスクを伴います。
☝医師が不当な要求に応じた際のリスクについて説明します。
1.行政上の責任(保険医指定の取消し等)
健康保険法に基づき、保険診療は「医学的に必要」な範囲で行われなければなりません。不要な検査や投薬は「不正請求」や「不当請求」とみなされ、保険医の登録取消しや、診療所の保険医療機関の指定取消しなどの重大な処分を受ける恐れがあります。
2.民事上の責任(損害賠償)
過剰な投薬によって副作用が生じた場合、たとえ患者が希望したことであっても、医師の「注意義務違反」が問われます。場合によっては多額の損害賠償責任を負う可能性が高まります。
3.刑事上の責任(詐欺罪・業務上過失致死傷罪)
療養費を不正に受給したとして詐欺罪に問われたり、健康被害が生じた場合に業務上過失致死傷罪に問われたりするリスクも否定できません。
このように診療所(医師)は患者からの不当な要求に応じる必要はありません。患者の強い要求に抗いきれずに応じてしまった場合、診療所(医師)として深刻なペナルティを負うリスクもありますので、慎重に対応することが求められます。
患者からの行き過ぎた要求でお悩みの場合は医療法務に詳しい弁護士法人海星事務所へご相談ください。
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