Q&A

2026.3.9

【Q&A】030 病院におけるカスハラの予防策

Q

病院において、カスハラが生じた場合に適切かつ迅速な対応を行うことができるように、普段から行っておくべき具体的な対策を教えてください。

 

 

 

A

カスタマーハラスメント(カスハラ)から病院とスタッフを守るためには、事後対応だけでなく、「事前の仕組みづくり」(予防措置)が不可欠です。法的な観点から、普段から備えておくべき具体的な対策を整理しました。

 

 

カスハラを未然に防ぐ・早期解決するための具体的の対策

 

1.組織的な基本方針の策定と公表

「当院はハラスメントを許さない」という姿勢をホームページや院内掲示で明文化します。また、診療申込書や入院同意書に「不当要求や迷惑行為があった場合は診療を中止し、退去を求める」旨の条項を盛り込んでおくことが、法的な「施設管理権」を行使する際の強い根拠となります。

 

2.具体的な「対応マニュアル」の作成

どの程度の暴言で「警告」し、何分居座ったら「警察へ通報」するかといった具体的な基準を院内にて定めます。スタッフが一人で抱え込まず、組織で対応できる報告ルートを明確にしておくことが、スタッフのメンタル保護に繋がります。

 

3.証拠保全のための環境整備

防犯カメラの設置(録画中であることの掲示を含む)や、受付でのボイスレコーダーの常備は、それ自体が抑止力となり、万が一の際の有力な証拠となります。

 

4.スタッフ研修の実施

法律専門家などによる研修やロールプレイング勉強会などを通じ、スタッフが知識や知恵を習得・共有するとともに毅然とした断り方や、警察を呼ぶタイミングをシミュレーションします。

 

5.「入院・診療同意書」への条項追加 

契約段階での予防策です。同意書に「ハラスメント行為があった場合には、直ちに診療を終了し、退去を求める」等の具体的な条項を盛り込みます。これにより、いざという時に「事前に合意したルール」として、法的に診療拒絶の正当性を主張しやすくなります。

 

6. 「患者の権利と義務」の掲示 

「最善の医療を受ける権利」と対になる形で、「医療提供に協力する義務」「暴言・暴力を振るわない義務」を明文化して掲示します。病院を「サービスを提供する場所」だけでなく「互いの信頼で成り立つ公共の場」と再定義することで、理不尽な要求を抑制する心理的障壁を作ります。

 

7.対応場所の構造的工夫

クレーム対応を行う相談室は、「出口を2か所作る」「監視カメラや非常ボタンを設置する」といった物理的な安全確保が重要です。また、受付カウンターにアクリル板や一定の距離を保つパーテーションを設置することも、衝動的な暴力を防ぐ有効な手段となります。

 

8.弁護士等による「窓口代行」の明示 

「悪質なケースには顧問弁護士が対応します」というポスターを掲示するだけでも大きな抑止力になります。実際にトラブル化した際、「ここからは弁護士が窓口になります」と切り替えることで、スタッフを攻撃の矛先から完全に外すことができます。

 

このように、病院でのカスタマーハラスメントに対する予防策にはいくつもの有効な手立てがあります。どのような対策が適しているのかは、病院・診療所の別、規模、診療科、地域性などによっても異なります。

 

カスタマーハラスメント対策についてのお悩みは弁護士法人海星事務所までご相談ください。ともに知恵を出し合い、万全の対策を講じることでカスハラを未然に防ぎ、スタッフの良好な職場環境を維持しましょう。